竜神になった三郎


どのくらいの時間がすぎたのでしょうか。
「気分はどうじゃ。気がついたかな」
その声で、三郎は、はっと目がさめました。



三郎は、広い部屋の中で寝ていました。
そばには、長いひげのおじいさんが立っ
ていました。
「わしは地の国の神じゃ。本当にひどい
目にあったのぅ。しかし、おまえはあん
なひどい目にあっても、兄たちを少しも
にくんでおらぬ。なぜじゃ。なぜおまえ
は、兄たちをにくまないのじゃ」
神様は、三郎にたずねました。



「私は幼い時から、太郎兄さんにも次郎
兄さんにも、かわいがってもらいました。
兄たちがなぜあんなひどいことをしたの
か、私にはわかりません。
兄たちにつきおとされた時は、本当にび
っくりしました。しかし、私は、兄たち
をにくむ気にはどうしてもなれません」
三郎は、そう答えました。 



「おまえは、本当に不思議な男じゃのぅ。
そうだ、おまえを地の国の王子にしてあ
げよう」
「えっ、私が地の国の王子ですって?」
「そうじゃ。人を少しも疑うことを知ら
ないおまえを、この国の王子にしてあげ
よう。じつは王様にはあとつぎがなくて、
困っていた所じゃ。これからおまえは、
この国でのんびりと暮らすがよい」


  ー 「竜神になった三郎」より ー



竜神になった三郎は、みほようこの二冊
目の童話集・「竜神になった三郎」に収録
されています。






童話集「竜神になった三郎」は、2004年
4月、諏訪大社御柱祭にあわせ、「鳥影社」
から発行されました。



    童話集「竜神になった三郎」

http://www.geocities.jp/dowakan/douwasyuu2.html



竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)

竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)