女神さまとの約束


    女神さまとの約束28


長者とふくは、硫黄岳の頂上へ、爆裂
火口跡をみに行きました。
硫黄岳は、なだらかな山でしたが、礫
がごろごろころがっています。



「とうちゃん。これが、爆裂火口跡だ
よ」
「絶壁だね。下をみると、目がまわり
そうだね」
長者は、火口跡をみて驚きました。



「さあ、ふく。元気になったから、明
日は家へ帰ろう」
「とうちゃん。私は、この岩場にとど
まるわ」
「なぜだい?」
「私、八ヶ岳の女神さまと約束したの」
「ふく。女神さまとどんな約束をした
んだい」



「とうちゃんの病気をなおしてもらう
かわりに、この岩場にとどまって、病
気で苦しんでいる人を助けるって、女
神さまと約束したの」
「そうか。ふくは、わしのために、女
神さまとそんな約束をしたのか。
わしは、何も知らなかった」


              つづく



信州の佐久地方には、「白駒の池」と
いう伝説があります。



「女神さまとの約束」は、「白駒の池」
の伝説をヒントにして、みほようこ
書いた物語。