赤い夕顔の花11
「私は、最後まで、盛永さまのそ
ばにいたいと思います」
「お万。すぐ実家にもどるのじゃ。
関家のためにも、長五郎をしっか
り守るのじゃ。
お万、長五郎のこと、頼んだぞ」
盛永がいいました。
お万は、盛永のいいつけで、浪合
の実家に戻ることにしました。
「盛永さま。無事を祈っています。
どうか気をつけて戦ってください。
あなたが迎えにきてくれるのを、
実家で待っております」
「お万。道中気をつけて行くのじゃ
よ。かならず迎えにいくから」
「長五郎。母のいうことをよく聞く
のだよ」
盛永は、長五郎の頭をやさしくなで
ました。
「さあ、お万。この野良着に着がえ、
急いで城をでなさい」
盛永が、お万をせかしました。
お万と長五郎は、うす汚れた野良着
を着て、家来とともに城を出ました。
つづく
「赤い夕顔の花」は、信州の南端
にあった「権現城」に伝わってい
る話をヒントにして、みほようこ
が書いた物語。