開善寺の早梅の精


   開善寺の早梅の精 18


女の人は、「ちぎりをかわす相
手が梅の花ならば、翌朝はとて
もよい香りが残っているでしょう」
とよんだのでしょうね。



女の人は歌を読むと、静かに奥
へ消えていきました。



どのくらいの時間がすぎたので
しょうか。
文次が目をさますと、美しい女
の人も、おいしい酒も、料理も
消えていました。
文次は、一人ぽつんと、梅の木
の下に立っていました。


         つづく