開善寺の早梅の精


   開善寺の早梅の精 20


いや、夢ではない。わしは、梅
香となのる女の人と、たくさん
の歌をよんだ。ほんとに楽しい
ひとときだった」
文次は、小声でつぶやきました。



すると・・・。
風もないのに、梅の花びらが、ひ
らひらと文次の上に舞いおりてき
ました。
そして、梅の花の香りが、いちだ
んと強くなりました。



「文次さん。昨夜は、ほんとに楽し
かったわ。ありがとう。来年、梅が
咲くころ、ここで会いましょうね。き
っとよ」
どこからか、やさしい声が聞こえて
きました。


        つづく