笛の音よ、永久にひびけ


   笛の音よ、永久にひびけ1



志賀高原の丘の上に、大きないたや楓の木
が立っています。
「あーあ、よく寝たのぅ。さて、ぼつぼつ
目をさますとするか」
二百才になった楓は、大きなあくびをしま
した。そして、芽をだす準備を始めました。




「ほーほけきょ、ホーホケキョ」
四月になると、森へうぐいすがやってきます。
「楓のおじさん、元気?」
「ああ、元気だよ。うぐいす君、君は良い声
だね」
楓は、うぐいすがくるのを、楽しみにして待
っています。



「かっこう、かっこう」
五月なかばになると、かっこうがやってきます。
かっこうの元気な声が、森にひびきわたります。
「かっこう君、君は元気だねぇ」
楓は、かっこうに話しかけます。
「もうすぐ夏がきますよぉ」
かっこうは、森の仲間たちに、夏の訪れを知ら
せて歩きます。
「わしもかっこうのように、いつまでも元気で
いたいものじゃのぅ」
楓はかっこうの声を聞くたびに、そう思います。



楓の木には、こげらもやってきます。こげらは、
木の幹をコツコツとたたきながら、虫を食べて
くれます。
「ギィーギィー」
初めてこげらの鳴き声を聞いた時、楓はびっく
りしました。
「はて、何の音だろう?ボートをこいでいるよ
うな、きみょうな音が聞こえるけれど、何の音
かな」と。
こげらの鳴き声だと知り、楓は「面白い鳴き声
だな」と思いました。




「ピーヒョロロ、ピーヒョロロ」
晴れた日には、森の上空を、とびがのんびりと
んでいます。
すずめ・しじゅうから・からす・おながなどは、
一年中楓の木に遊びにきます。
りすやかもしかも、やってきます。せみやとん
ぼ、かぶと虫も遊びにきます。
森の動物たちは、楓が大好き。楓は、この森の
人気者でした。




長い休みになると、村のこどもたちも、丘の上
へやってきます。
「じゃんけんぽん」
あいこでしょ
「もうーいいかい」
「まぁーだだよ」
こどもたちは、楓の木の下で、じゃんけんやか
くれんぼをして遊びます。
楓は、村のこどもたちが大好き。
こどもたちも、楓の木が大好きでした。



童話「笛の音よ、永久にひびけ」は、今年
http://www.choeisha.com/
から発行されるみほようこの童話集「風の
神様からのおくりもの4」に収録されます。



   今までに発行された「風の神様からの
   おくりもの」シリーズ



     風の神様からのおくりもの―諏訪の童話




     竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)




     ふしぎな鈴 風の神様からのおくりもの (3)