童話「守屋山に黄金色の花が咲いた


  童話「守屋山に黄金色の花が咲いた」2



もう千回もここへきたのじゃな。
いろいろつらいだろうが、これからも兄にやさし
くしておやり。
兄はそのうちきっとよくなるだろう」
少女は明神さまにいわれたように、今まで以上に
兄にやさしく接しました。



しかし、心を病んでいる兄には、少女のやさしい
気持など、少しも通じませんでした。
それどころか、兄はいらいらして大声をだしたり、
理由もなく少女にあたりました。
そうかとおもうと、急にふさぎこみ、何日も部屋
からでてこない日もありました。



そんな兄に少女はどう接したら良いのかわからず、
ただおろおろするばかりでした。
心のやさしい少女でしたが、そんなことがたび重
なると、兄をうとましく思うこともありました。
「私は兄ちゃんのことをこんなに思っているのに
・・・。なぜ兄ちゃんは・・・」
少女は心をとざしている兄をみることが苦痛でした。



そんな少女の様子を、明神さまははらはらしながら、
見守っていました。
「少女よ、これくらいの苦しみや悲しみに負けるなよ。
おまえのことは、このわしがしっかり守ってやるぞ」
明神さまは、少女の顔をみるたびに、心の中でそうつ
ぶやくのでした。



                          つづく


童話「守屋山に黄金色の花が咲いた」は、みほようこ
の初めての童話集・「風の神様からのおくりもの」に
収録されています。



風の神様からのおくりもの―諏訪の童話

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