竜神になった三郎


竜神になった三郎21


竜になった三郎は、あっという間に諏訪湖
に着きました。
「三郎さーん、ここよー」
湖の底から、優しい妻の声が聞こえました。



三郎は、ばしゃっと湖の中にとびこみました。
湖の底には、こいしい妻がいました。
愛する妻も、竜になっていたのです。
「おっかあー」
「三郎さーん」
二人はしっかりだきあいました。



三郎を諏訪湖で失った妻は、悲しみのあま
諏訪湖に入り、なくなりました。
そして、竜になり、諏訪湖の底で、さびし
くくらしていたのです。
「おっかあ、もうお前をはなさないぞー」
「三郎さん、私ずっとあなたを待っていた
のよー」
二人は、湖の中をいつまでも泳ぎまわりま
した。


         つづく



竜神になった三郎」は、みほようこの二
冊目の童話集・「竜神になった三郎」に収
録されています。








竜神になった三郎」は、2004年4月、
信州の「諏訪大社」の御柱祭にあわせ、
「鳥影社」から発行されました。
挿絵は、長野ひろかず先生。



湖につき落とされた三郎が、地の神に助けら
れ、心のやさしさゆえに、竜神となる表題作
ほか、守屋山の明神様にまつわる、福寿草
少女の話を収録。


信州諏訪の「風の神様」から聞いた話をまと
めた第2弾。