火とぼし山


  火とぼし山2


「きよちゃん。・・・おれ・・・」
「どうしたの。次郎さん」
「大事な話がある」
「次郎さん。大事な話って、何?」



「おれ、引っ越すことになった」
次郎が、早口でいいました。
「えっ」
きよは、びっくりして、次のことばが
でませんでした。



「いい仕事がみつかったんだ」
「どんな仕事なの」
「大きな農家で、働くことになった」
「次郎さん。いつ引越しをするの」
「三日後」



「三日後?」
「そう、三日後。忙しいから、早くき
てほしいというんだ」
「急な話ね。次郎さん、なぜもっと早
くいってくれなかったの」
「ごめん。昨夜、決まったんだ」


            つづく



信州の諏訪湖には、「火とぼし山」と
いう悲しい伝説があります。
「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。