火とぼし山


     火とぼし山54


きよがいうように、みよは何度も次郎
が働いているたんぼや畑へやってきま
した。
次郎は、「会いにこないで」といえず、
困っていました。みよは、働いている
家の主人の姪だったからです。



「おらが好きなのは、きよちゃんだけ
だよ」
次郎はそういったけれど、きよにはそ
のことばが白々しく聞こえました。



「次郎さんのうそつき。次郎さんの心
の中には、その人が住んでいるのに、
なぜうそをいうの」
きよは、心の中でさけびました。



そんなことがあって、きよと次郎はき
まずいままで別れました。
こんな別れ方をしたのは、初めてでした。


              つづく



「おみわたり」で有名な信州の諏訪湖
には、「火とぼし山」という悲しい伝
説があります。


「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。