鹿になった観音さま4
三郎は、いそいで裏山へ行きました。
「うー、うー」
「わん、わん、わん」
タケルとチハヤが、大声でほえてい
ます。でも、あたりには何もいません。
二匹の犬は、何にむかってほえ
ているのでしょうか。
「タケル、チハヤ。どうした」
三郎は、犬たちに声をかけました。
二匹の犬は、なきやみません。
ますますはげしくないています。
「どうしたのじゃ。近くに何かいる
のだろうか」
三郎は、あたりをみまわしました。
「がさっ」
「ごそっ」
どこかで音がしました。
つづく
「鹿になった観音さま」は、信州の伊那
谷・「三穂」に伝わっている話をヒン
トにして、みほようこが書いたもの。