赤い夕顔の花25
私は、盛永さまが大好きだった。
盛永さまは、なくなった父にどこ
となく似ている。
そんな盛永さまを、私は実の父の
ように慕ってきた。
盛永さまも、みよりのない私をわ
が子のようにかわいがってくれた。
私は、お万さまも、大好きだった。
母のように慕っていた。
お万さまも、心から私をかわいが
ってくれた。
でも、盛永さまは、誰よりも奥が
たのお万さまを愛し、大事に思っ
ていたのだ。くやしい。
犬坊の頭の中を、これらのことば
がぐるぐるとかけめぐりました。
「お万さまは、ほんとに幸せなか
だ。こんな非常時にも、盛永さま
に思ってもらえるのだから」
犬坊は、母のように慕っていた奥
がたのお万に、しっとしました。
つづく
「赤い夕顔の花」は、信州の南端
にあった「権現城」に伝わってい
る話をヒントにして、みほようこが
書いた物語。