開善寺の早梅の精


  開善寺の早梅の精1


http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20080302#p1



  「開善寺の早梅の精」より


どのくらいの時間がすぎたのでし
ょうか。
文次が目をさますと、美しい女の
人も、おいしい酒も、料理も消え
ていました。



文次は、一人ぽつんと、梅の木の
下に立っていました。
梅の花が、月あかりに照らされ美
しくみえます。
何事もなかったかのように、梅の
花の香りが、あたり一面にただよ
っていました。



東の空が、だんだんに明るくなり
ました。
「ちゅん、ちゅん、ちゅん」
すずめのなき声も聞こえます。



「わしは、夢をみていたのだろうか。
美しい上品な女の人、舌がとけて
しまいそうなうまい酒、おいしい
料理。



あれは、夢だったのだろうか。
いや、夢ではない。
わしは、梅香となのる女の人と、
たくさんの歌をよんだ。
ほんとに楽しいひとときだった」
文次は、小声でつぶやきました。



すると・・・。
風もないのに、梅の花びらが、ひ
らひらと文次の上に舞いおりてき
ました。
 


「開善寺の早梅の精」は、信州の
伊那谷にある「開善寺」に伝わっ
ている「早梅の精」の話をヒント
にして、みほようこが書いたもの。



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