古事記神話「古事記物語」121
海彦山彦 5
山彦は、また別の剣で千本のつり針を作り、海彦に
渡しました。
「兄さん。どうかこのつり針で許してください」
「許さん。元のつり針でなくてはだめだ」
そういって、海彦はつり針を受け取りませんでした。
そんなある日。
山彦はまた海へ行き、ぼんやり海をながめていました。
「兄さんは、なぜ大事な剣で作ったつり針を、受け
取ってくれないのだろう。つり針をなくしたことは
悪いけれど、かわりのつり針を受け取ってくれても
いいじゃないか。兄さんのいじわる」
山彦は、海に向かってつぶやきました。
つづく