ありがとう

昨日はいつもより三十分位早く散歩に
行った。 坂道で、重そうな袋を持った
少女に出会った。
片方の手だけでは持てないのか、両手
で袋を持って歩いている。 
何が入っているのか、重そうだ。 
十歩ばかり歩いては、一休みしている。 
みていると、よろよろしている。




「重そうだね。一緒に持ってあげるよ」
と声をかけたら、「ありがとう」と、
さわやかなことばがかえってきた。 
ひさしぶりに聞く「ありがとう」とい
うことばだった。 思わず、私は少女
の顔をみた。
めがねをかけた優しそうな少女だった。




図書館へ本を返しに行くのだといって
いた。 小学校の四年生とか。
袋の中には、十冊以上の本とビデオが
入っているようだ。 二人で袋を持っ
ても、結構重い。 
一人では重いだろうな・・・と思った。
「家はどこ?」と聞いたら、「。。。。。」と。
じゃあ、十五分以上、重い袋を持って
歩いていたのだなと思った。 




五分位、いろいろな話をしながら、少
女と一緒に歩いた。
図書館の近くで別れる時、少女は「あ
りがとうございました」と丁寧に頭を
さげてさっていった。
みていたら、何度も会釈をしながら・・・。
この少女のおかあさんは、きっと素敵
なおかあさんだろうなと思った。




私たちは「ありがとう」といわなくて
はならない時でも、「どうも・・・」
とか、「すみません」ということばで
ごまかしてしまうことが多い。
今日はひさしぶりにさわやかな少女に
出会えた。
少女よ、こちらこそありがとう。
いつまでも今の素直な気持を忘れない
で・・・ね。