からすの思い出


からすはまねがうまいと、聞いたことがあ
る。  愛犬「りゅう」が生きていた頃は、
夕方決まった時間に散歩に行った。




すると、ねぐらへ帰っていく、からすの群れ
にかならずであった。
「からすはなきまねがうまいというから、犬
のなきまねをしたらどうだろうか」




そう思った私は、りゅうに「わん・わんと
ないてごらん」といった。
りゅうは、あまりなかない犬だった。
その時も、りゅうは「何馬鹿なこといって
いるのだ」というような顔をしただけ。




りゅうがないてくれないならば、私が「わん」
となくよりしかたがない。
私は、そのからすの群れにむかって、「わん・
わん」と何度かないた。




そして、次の日も、その次の日も、ねぐらへ
帰っていくからすの群れにむかって、「わん・
わん」とないた。
しかし・・・からすは「わん」となくけはい
はない。
「飼っているからすでなくては、だめなんだ」
そう思った私。




ところが・・・ある日。
りゅうと散歩していたら、またからすの群れ
にであった。
すると、その中の一羽が「わん、わん」とな
いているではないか。




「りゅう、からすがわんわんってないている
よ。からすってすごいね!!」
私は感激して、おもわずりゅうに話しかけた。
りゅうも、からすってすごいと思ったのか、ま
んざらでもない顔をしていた。




それからも、時々、ねぐらへ帰るからすが「わ
ん・わん」とないているのを聞いた。
嘘のような話だが、本当の話だ。
よほど、ものまねの上手なからすだったのだ
ろう。 そのからすは、今どうしているだろう。