竜の姿をみた少女

「竜の姿をみた少女」は、みほようこの二冊目の
童話集に収録されている「竜神になった三郎」の
続編。


昨日に続いて、「竜の姿をみた少女」を紹介しま
す。 初めてのかたは、17日・18日・19日
の日記を読んでくださいね。



http://d.hatena.ne.jp/youko510/20060117


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20060118


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20060119



「竜の姿をみた少女4」


かなは、また湖へ行き、湖をじっとながめてい
ました。
「少女よ、おまえは本当にしらかば湖が好きな
んだね」
ふりむくと、白いひげのおじいさんが立ってい
ました。みたことのないおじいさんです。
おじいさんは白い着物をきて、長い杖をついて
いました。
「わしはのぅ、昔この村に住んでいたものじゃ。
ここはのどかで、本当にいい所じゃのぅ。
わしは兄たちといっしょに、春はわらびやたら
の芽、秋は栗やきのこをとったものじゃ。
あの頃は、本当に楽しかったのぅ」
おじいさんは、昔をなつかしむように、こども
のころの話をしてくれました。



「おじいさん。この湖に、竜が住んでいるとい
ういいつたえを知っている?」
「ああ、知っているとも」
おじいさんは、大きくうなずきながらいいました。
「じゃあ、おじいさんは、この湖に竜が住んでい
ると思う?」
「さあ・・・、どう・・・じゃろな」
おじいさんは、なぜかこまったような顔をし、
口ごもりました。
おじいさんは、なぜ口ごもったのでしょうか。



その後、かなは湖のほとりで、何度かおじいさん
に会いました。
「知らないおじいさんだけど、どこのおじいさん
かしら。別荘のかたかしら」
かなは、おじいさんのことを、みんなに聞いてみ
ました。
「私、白い着物をきたおじいさんなんて、一度も
会ったことがないわ」
「ぼくもみたことがない」
「この村には、長い杖をついたおじいさんなんて、
一人もいないよ」
どの人も、そういいました。
「じゃあ、私だけがあのおじいさんをみているの
かしら」
かなは、ふしぎに思いました。



そんな夏のある日。


         つづく



竜神になった三郎」が収録されている本は、
    こちら。




竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)

竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)