竜神になった三郎


   竜神になった三郎5


「三郎さはいいのぅ。
美人で、やさしくて、その上働き者の嫁をもら
って。おらの息子も、あんな良い嫁をもらって
くれたら、どんなにうれしいだろう」
そういって、村の人々は、三郎の嫁をほめまし
た。



素敵な妻を迎えた三郎をみて、太郎と次郎は、
心おだやかではありません。
「三郎は、良い嫁をみつけたな。
なんでもできるし、その上すげえ美人だ。ほん
とにうらやましいな」
太郎と次郎は、会うたびに三郎の妻の話をしま
した。



二人は、三郎がうらやましくてしかたがありま
せん。
なんとかして、幸せいっぱいの三郎を困らせて
やろうと、二人は相談しました。
人がうらやむほど、仲の良い兄弟だったのに、ど
うしたのでしょうか。
「どうやったら、三郎をぎゃふんといわせること
ができるかな」
二人は、何ヶ月もかけて相談しました。
兄たちがそんな悪い相談をしているとは夢にも思
わない三郎は、今までどおり兄たちと仲良くして
いました。



山深い村にも、ようやくあたたかな春がやってき
ました。
太郎と次郎は、今日もこそこそと悪い相談をして
います。
「次郎や、たてしな山の奥に、人穴があるそうだ。
その穴へ落ちると、二度と戻ってこられないそう
だぜ。その穴へ、三郎を突き落としてしまおうか」
「兄さん、そんなことをしたら、三郎がかわいそ
うだよ。三郎だって、人穴のことは知っているし、
その計画は無理だよ」
「それもそうだな。ほかに何か良い考えはねえかな」
二人は、会うたびに三郎を困らせようと相談しました。



            つづく



竜神になった三郎」は、みほようこの二冊目の
童話集・「竜神になった三郎」に収録されていま
す。



竜神になった三郎」は、2004年4月、七年に
一度おこなわれる諏訪大社御柱祭にあわせて
http://www.choeisha.com/
から、発行されました。




   あなたは、信じていた人にうらぎられた時、
   どうしますか?



竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)

竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)