白駒の池


    白駒の池5


「きよちゃん。赤褐色の部分は何というか知っ
ている?」
「知らないわ」
「ぶつえんほうというんだよ」
「ぶつえんほう?」
「そう、ぶつえんほう。そして、黄色の部分が、
花だよ」
清太は、座禅草を指さしていいました。



「座禅草はね、雪が降っても、霜がおりても、二
十数度に体温を保っているんだって。その体温で、
雪をとかして芽をだすそうだよ」
「清太さんて、植物にくわしいのね」
かあちゃんが、教えてくれたんだ。かあちゃん
はね、花や小鳥が大好きなんだよ。きよちゃんに
も、いつかかあちゃんを紹介するね」



清太は、自分は何をいっているのだろうと思いま
した。長者のおじょうさまが、貧しいおらの家に
遊びにくることなんて絶対ないのに・・・と。
「きよちゃん、座禅草の花ことばを、知っている?
座禅草の花ことばはね、沈黙の愛だって」
「どういう意味?」
「さあ・・・」
清太は、知っていました。
でも、てれくさくて口にだすことはできなかった
のです。
なぜなら、清太は、きよが大好きだったからです。
 

      つづく