白駒の池


白駒の池20


「とうちゃんは、いつも清太さんのことをほめて
いるのに、なぜ反対するの?」
「きよ。わが家は旧家、しかも庄屋の家柄。清太
の家は、明日の生活にも困るような貧しい家。あ
まりにも家柄がちがいすぎる」
「とうちゃん。家柄って、そんなに大事なの?」
「家柄は大事だ。幼い時から、同じような環境で
育った人なら、結婚してもうまくやっていける。
しかし、育った環境があまりに違いすぎると、う
まくやっていけないのだよ」



「とうちゃんは、家柄家柄というけれど、私はた
またま長者の娘として生まれ、清太さんは貧しい
家に生まれたというだけのことではないの。とう
ちゃんは、私が貧しい家の娘だったら、自分の息
子とつきあうのを反対するの?」
長者は、何もいえませんでした。
きよは、心のやさしいきだての良い娘。それにし
っかりもの。たとえ家柄がちがっても、息子の嫁
になってほしいと思うだろうなと、長者は思いま
した。



「きよ。正直にいおう。とうちゃんは、清太が大
好きだ。清太は、誠実な青年だ。体も丈夫だし、自
分の考えもしっかりもっている。その上働き者だ。
家柄のことを除けば、清太はきよの結婚相手として
もうしぶんのない青年だと思う。清太が家柄の良い
家に生まれていたら、とうちゃんは清太をむこにむ
かえたい」
「私は、本人がしっかりしていれば、家柄なんて気
にしなくてもいいと思うけれど」


                       つづく