ふしぎな鈴「じいちゃんとばあちゃん」3
かなとおじいさんは、蝉の羽が完全に伸びきるまで、
じっとみていました。
「じいちゃん・・・」
かなは胸がつまり、何もいえませんでした。
「かなもこの蝉のように、おかあさんのおなかから、
生まれてきたのだよ」
おじいさんがぽつりといいました。
おじいさんと一緒にみた蝉の羽化は、忘れられない
思い出になりました。
おじいさんもおばあさんも、花や小鳥が好きな心の
優しい人でした。
かなが五才の時。
おじいさんが病気でなくなりました。脳こうそくで
した。
かなは人の死に初めてであいました。温かだったお
じいさんの体が、氷のように冷たくなっていくのが
信じられませんでした。
「じいちゃん、じいちゃん」
かながいくらよびかけても、おじいさんは何も返事
をしてくれません。
つづく
「ふしぎな鈴」は、みほようこの三冊目の童話。
一昨年九月、「鳥影社」から発行されました。
人はなくなると
その人の魂はどこへ行くのでしょうか?