明神さまの姿をみた少女


     明神さまの姿をみた少女8


「おまえの兄を思う気持は、よくわかった。何年か
後には、おまえの兄はきっとよくなるだろう。
いつまでも優しい心を忘れずに生きていくのじゃよ。
今日ここでわしに会ったことは、決してだれにもい
うではないぞ。くじゃくちょうの舞のこともな。



では明日また社であおう。待っているぞー」
こういうと、明神さまは「ぴゅー」と風になって、
いつも住んでおられる社の方にむかってとんでいき
ました。



「ぴゅー」というここちよい風で、少女ははっとわ
れにかえりました。
松虫草の花が風でかすかにゆれています。
何千匹といた赤いくじゃくちょうは、どこへいって
しまったのでしょうか。
あちこちさがしましたが、一匹もいません。
明神さまの所へ案内してくれた小鹿も、どこにもい
ませんでした。


つづく



「明神さまの姿をみた少女」は、みほようこの初めて
の童話集・「風の神様からのおくりもの」に収録さ
れています。



風の神様からのおくりもの―諏訪の童話

風の神様からのおくりもの―諏訪の童話