竜神になった三郎


竜神になった三郎5


「なんて美しい人だろう。こんな人を妻に
できたら、どんなに良いだろう」
三郎は、心の中でそっとつぶやきました。
一方、娘の方も、「なんてりりしいかたか
しら。こんな人の妻になれたら、どんなに
うれしいことか」と思ったのです。



ひとめみた時から、二人とも忘れられなく
なってしまったのです。
「家はどこ?」
「この近くなの。ほら、あそこにみえる家よ」
「兄弟は何人?」
「私、一人っ子なの。おじいさんと暮らし
ていたけれど、おじいさんもこの春なくな
ってしまったわ。だから今は一人っきり」



村の娘とちがい、娘のことばは上品でした。
二人とも初めて会ったのに、いつかどこか
で会ったことがあるような、とてもなつか
しい気がしました。


          つづく



童話「竜神になった三郎」は、信州の諏訪
地方に伝わっている「竜になった三郎」を
ヒントにして、みほようこが書いた物語。



竜神になった三郎」は、みほようこの二
冊目の童話集・「竜神になった三郎」に収
録されています。








竜神になった三郎」は、2004年4月、
諏訪大社御柱祭にあわせて、「鳥影社」
から発行されました。
挿絵は、長野ひろかず先生。
すてきな挿絵です。