火とぼし山


   火とぼし山1


第一章  西の村へ


八ヶ岳のふもと、信州の諏訪盆地には、
諏訪湖とよばれる美しい湖があります。
「おみわたり」として有名な湖でした。



「次郎さん。みて、白鷺よ」
「白鷺?」
「ほら、あそこ」
きよは、諏訪湖の上空を指さしました。
白鷺が一羽、西山にむかってとんでい
ます。



「ほんとだ。白鷺って、美しい鳥だね」
「私、白鷺が大好き。次郎さんは、白
鷺のように、空を飛べたらいいなって、
思ったことない?」
「ないな」



「私は、あるわ。白鷺のように羽があ
れば、自分が行きたい所へ、自由に飛
んで行けるもの」
遠ざかっていく白鷺をみながら、きよ
がいいました。


            つづく



信州の諏訪湖には、「火とぼし山」と
いう悲しい伝説があります。
「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にしてみほようこが書いた物語。