火とぼし山


    火とぼし山25


「娘よ。青年と仲良くしたまえ。けん
かをしたのなら、一日も早く仲直りし
なさい。
けんかが長びくと、ろくなことはない
からのぅ」
明神さまは、心の中で娘に話しかけま
した。



数日後。
明神さまは、湖のほとりで、また娘を
みかけました。
娘は、湖の向こうの西山にむかって、な
にかしゃべっています。



「次郎さん。元気? 今、何をしてい
るの。一カ月も、次郎さんに会えないな
んて、私さみしい。
一日も早く、次郎さんに会いたい。
白鷺のように羽があれば、毎日でも次
郎さんの所へ飛んでいけるのにね」と。


              つづく



「おみわたり」で有名な信州の諏訪湖
には、「火とぼし山」という悲しい伝
説があります。


「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。