鹿になった観音さま


   鹿になった観音さま17


一ヶ月後。
和尚は、いつものように、石にな
った二匹の愛犬に、お経をあげて
いました。



すると・・・。
「わん、わん、わん」
犬の声がしました。
石の中から、タケルとチハヤがと
びだしてきました。



「タケル」
「チハヤ」
和尚は、二匹の犬をしっかりだき
ました。
タケルとチハヤは、和尚の顔をぺ
ろぺろなめています。
「タケル、チハヤ。元にもどれて
よかったのぅ」
和尚の目から、涙があふれました。



「タケル、チハヤ。さあ、たくさん
おあがり」
和尚は、二匹の犬にえさをやりました。
二匹の犬は、よほどおなかがすいて
いたのでしょう。
あっという間に食べてしまいました。
和尚は、二匹の犬をうれしそうにみ
ています。


             つづく



「鹿になった観音さま」は、信州の
伊那谷・「三穂」に伝わっている話
をヒントにして、みほようこが書い
たもの。