赤い夕顔の花30
「盛永さまや家臣たちが、無事で
ありますように。
もう一度、この城に戻ってくるこ
とができますように」
お万は、心の中で祈りました。
「奥がたさま。背中の荷物を、少
し持ちましょうか」
「だいじょうぶです。あなたこそ、
重い荷物を持っていただきすみま
せん。道中、どうかよろしくお願
いします」
「奥がたさま。無事に浪合の実家
へ着けるといいですね。では、先
を急ぎましょう。
下条の兵士たちにみつからないよ
うに、こちらの近道を行きましょう」
お万たちは、近道を歩いて行きま
した。
すると、向こうから、下条の兵士
が二人歩いてきました。
つづく
「赤い夕顔の花」は、信州の南端
にあった「権現城」に伝わってい
る話をヒントにして、みほようこが
書いた物語。