赤い夕顔の花


   赤い夕顔の花46


「何をいっとる。すべてほんとの
ことではないか」
おばあさんは、権現城の近くに住
む親類の人から聞いたといううわ
さを、次から次へと早口でまくし
たてました。



お万は、おばあさんの話を黙って
聞いています。
「おばあさん。つれの者が、こと
わりもなく夕顔の花をとったこと、
おわびいたします。



でも、たった一つ花をとっただけ
で、次から次へとひどいことをい
われるなんて思ってもみませんで
した。
私は、あなたの話を、さっきから
黙って聞いておりました。



城主のうわさは、私の耳にも入っ
ております。あなたがいわれたよ
うなことを、城主はおそらくして
いるのでしょう。

             つづく



「赤い夕顔の花」は、信州の南端
にあった「権現城」に伝わってい
る話をヒントにして、みほようこ
書いた物語。