赤い夕顔の花


   赤い夕顔の花50


「戦さえなかったら、長五郎にこ
んな辛い思いをさせなくてもすむ
のに。一日も早く戦のない平和な
世の中になってほしい」
お万は、心の中でそっとつぶやき
ました。
お万たちは、浪合の実家に向かっ
て道をいそぎました。



その頃。
城主の盛永を、やりで刺し殺して
しまった犬坊は、むゆう病者のよ
うに、ふらふらと山の中をさまよ
っていました。



どこをどう歩いたのか、犬坊は思
い出せませんでした。
疲れはてた犬坊は、木の切り株に
腰をおろしました。


              つづく



「赤い夕顔の花」は、信州の南端
にあった「権現城」に伝わってい
る話をヒントにして、みほようこ
書いた物語。