白駒の池物語21
「知らないわ。どんな花」
「座禅草はね、とてもおもしろい
形をしているんだよ」
「おもしろい形って」
「みればわかるよ。おじょうさま」
清太は、おどけていいました。
「おらの家の近くでも、座禅草の
花が咲く。
もう花が咲いているかな」
清太は、故郷の諏訪を思い出しな
がらいいました。
「その場所はね、諏訪の神様が住
んでいる守屋山のふもとなんだ。
春になるとね、林の湿地に、座禅草
がかわいい芽をだすんだよ」
いつも無口な清太が、今日は一人
でしゃべっています。
「今日の清太さんは、別人みたい」
きよは、心の中でそっとつぶやき
ました。
つづく
「白駒の池物語」は、信州佐久にあ
る「白駒の池」に伝わっている話を
ヒントにして、みほようこが書いた
物語。