有明山に住む鬼・八面大王21
「ありがとうございます。
では、お言葉に甘え、雪がやむま
でお世話になります」
「そうじゃ、雪がとけるまで、泊
まっていけばよい」
弥助が、ぽつりといいました。
「じゃあ、わしは、これから朝飯
のしたくをするで、ここで休んで
いておくれ」
「おかあさん。私が、朝飯をつく
ります。今朝は、何をつくりまし
ょうか」
「今朝は雑煮を食べる日じゃが、
事情があって、もち米を買うこと
ができなかった。
だから、もちがつけなかったのじゃ」
「事情とは・・・」
「暮れの二十九日、弥助が買物に
行ったのじゃが、峠でわなにかか
っている山鳥をみつけてのぅ。
弥助は、わなにかかった山鳥を、
逃がしてやったのじゃ。
かわりに、買物の金を全部わなの
そばにおいてきたらしい。
だから、暮れの買物が何もできな
かったのじゃ」
つづく
昨日の分はこちら。
http://d.hatena.ne.jp/youko510/20090513#p1
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有明山に住む鬼・八面大王1