火とぼし山


   火とぼし山63


「次郎さんのうそつき。
次郎さんの心の中には、その人が
住んでいるのに、なぜそんなこと
をいうの」
きよは、心の中でさけびました。



その日、きよと次郎は、きまずい
ままで別れました。
こんな別れ方をしたのは、初めて
でした。



私は、今でも次郎さんが大好き。
でも、次郎さんの心の中には、私
以外の人が住んでいる。
その人は、大きな農家の一人娘。
その人と結婚すれば、次郎さんは
一生気楽に暮らしていけるものね。



だから、次郎さんは、私がじゃま
なのではないだろうか。
きよは、次郎と過ごした日々を思
い出しながら、とぼとぼと家に帰
りました。


           つづく



    昨日の分は、こちら。


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100511#p1



    初めて読んでくださったかたへ


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100309#p1



信州の諏訪湖には、「火とぼし山」
という悲しい伝説があります。
「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。