火とぼし山52
「次郎さん、こんばんは」
「きよちゃん。今夜は、ずいぶん
早かったね。どうしたの」
「私、湖を泳いできたの」
「えっ、湖を?」
次郎は、驚いて聞きました。
みると、きよの髪から、しずくが
ぽたぽたとたれています。
「私、一分でも早く、次郎さんに
会いたかったから、湖を泳いでき
たの」
「きよちゃんが泳ぎが達者だとい
うことは、おらも知っている。
でも、夜中に湖を泳ぐなんて危険だ。
深みにはまって、おぼれたらどうす
るの。死んでしまうよ。
きよちゃん、むちゃなことはしない
でね」
次郎が心配していいました。
つづく
昨日の分は、こちら。
http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100430#p1
初めて読んでくださったかたへ
http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100309#p1
信州の諏訪湖には、「火とぼし山」
という悲しい伝説があります。
「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。