ふしぎな鈴30
「とうちゃん、とうちゃん。
目をあけて。ねえ、とうちゃん、
おきて…」
かなはおとうさんの体にしがみ
つき、体をゆすりました。
さっきまで元気でいたおとうさ
んが、急になくなってしまうな
んて、かなには信じられません
でした。
「かな、おとうさんのそばで、少
しお休み」
おかあさんにいわれ、かなはおと
うさんのそばで休みました。
かなはおとうさんの大きな手に、
自分の手をそっと重ねました。
すると、おとうさんとすごした
六年間が、なつかしく思い出さ
れました。
おとうさんと沼へおにやんまや
銀やんまをとりにいったこと、庭
できあげはや黒あげはをとったこ
とが、まるで昨日のことのように、
なつかしく思い出されました。
つづく
前回の分は、こちら。
http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100712#p2
初めて読んでくださったかたへ
http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100610#p1
「ふしぎな鈴」は、みほようこの
三冊目の童話。
2005年9月、「鳥影社」から
発行されました。
リーン・リーン・リーン。…
五百年の時をへて、心やさしい小
桜姫と現代の少女をむすぶ、美し
い鈴の音が聞こえる。
信州諏訪の「風の神様」が、そっ
と教えてくれたお話。