ふしぎな鈴


「ふしぎな鈴」は、みほようこの三冊目の
童話。 九月半ば「鳥影社」から発行され
ました。


   人はなくなると、その人の魂はどこ
   へいくのでしょうか?

   
今日は、「ふしぎなリュック」の章の一部
分を紹介します。
この章は、生まれかわった小桜姫が、夫で
あった古杉先生と出会う場面です。



      (前略)

先生はかなの横に腰をおろし、いっしょに空
をみあげました。空には白い雲がぽっかり浮
んでいます。
かなは先生と話していると、心の中がぽか
ぽかと温かくなってくるような気がしました。
「いつまでも先生と一緒にいたい」
かなはそう思いました。


その時、かなのポケットの中に入っていた
鈴が、「リーン・リーン・コロンころん」と
鳴り出しました。
ポケットの中で、鈴がうれしそうにおどって
いるような感じでした。
かなはポケットの中から、鈴をとりだしました。


その鈴をみた先生は、なぜかとてもなつかし
い気がしました。
「桃の形の鈴、どこでみたのだろうか?」
しかし、どこでみたのか、先生には思い出
せませんでした。
「私はどこかでこの鈴をみたことがある。
どこでみたのだろうか?」
先生は心の中で何度もつぶやきました。


「リーン、リーン、コロンころん」
「リーン、リーン、コロンころん」 
かなは、むじゃきに何度も鈴をふっています。


すると・・・。           
先生の頭の中に、遠い昔のことが、ぼんやり
と浮かんできたのです。
どこかの海岸・・・おや?この海岸は春行っ
三浦半島の海岸にそっくりだが・・・。
白いお城・・・なつかしいなぁ。
私はこの城に住んでいたことがあるような気
がする。
乗馬のけいこをしている女性・・・あれ、い
つかこんな光景をみたことがあるよう
な気がする。
どこでみたのだろうか?


うちじにしている人々・・・血まみれになり、
なきさけんでいる人々。
「もしかしたら・・・私は昔三浦半島の城に
住んでいたことがあったのかもしれない。
そして、かなも私と一緒に暮らしていたのか
もしれない。


でも・・・かなはまだ四年生、今このことを
かなに話すわけにはいかない。かなが二十才
になったら話そう」
先生は心に決めました。


かなが鈴をわたすと、先生は鈴を手にのせ、
じっとみていました。
先生が鈴をなでた時、不思議なことがおこり
ました。鈴がぴかっぴかっと黄金色に輝きだ
したのです。


すると、先生の背中のリュックが、鈴めがけ
てころんところがってきました。
そして、灰色のリュックも、ピカッピカッ、
キラッキラキラと、黄金色に輝きだしたのです。
「なんて美しい鈴の音だろう。私はこの桃の鈴
をもっている少女に会える日を、ずっと長い間、
そう五百年近くじっと待っていたのです。


やっと、探していた鈴と少女に会うことができ
ました。私はとてもうれしい。
私はただの古いリュックではないのです。
遠い昔、三浦家に伝わったリュックで、行きた
いと思う所へ、さっと飛んでいける不思議なリュ
ックなのです。


かなさんが好きな月や星へも行けますよ。
なくなったおとうさんたちが住んでいる国へも、
飛んで行けるのですよ」
リュックはそういいました。
かなと先生は、びっくりしてただ顔をみあわせ
るばかりでした。


     (後略)








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ふしぎな鈴 風の神様からのおくりもの (3)

ふしぎな鈴 風の神様からのおくりもの (3)