竜の姿をみた少女

「竜の姿をみた少女」は、みほようこの二冊目の
童話集に収録されている「竜神になった三郎」の
続編。


昨日につづき、「竜の姿をみた少女」を紹介しま
す。 初めてのかたは、17日・18日・19日・
20日の日記を読んでくださいね。



http://d.hatena.ne.jp/youko510/20060117


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20060118


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20060119


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20060120



     「竜の姿をみた少女5」


湖のほとりで、またおじいさんに会いました。
「暑いのぅ」
そういって、おじいさんはかなの横にこし
をおろしました。
「ぴゅー、ぴゅーー」
その時、涼しい風がふいてきました。
「わぁー、いい風!!」
「いい風じゃのぅ」
二人は、同時にさけびました。



「かな、おまえは信じていた人にうらぎられ
たことがあるかな」
「はい、あります」
「その人にうらぎられた時、どう思ったの」
「この人は、なぜ私をうらぎったのだろう。
私は、この人のことを、ずっと信じていたの
に・・・と思ったわ」
かなは、そう答えました。



「わしはのぅ、若い頃、心から信じていた兄
たちに、うらぎられたことがあるのじゃ。う
らぎられたと知った時、わしはびっくりした。
兄たちは、幼い時からわしをうんとかわいが
ってくれた。
そんな兄たちが、わしをうらぎるなんて・・・。
兄たちが、なぜわしを湖の深いふちにつきおと
したのか、その時は理由がわからなかった。
心から信じていた人にうらぎられるのは、本
当につらいものじゃのぅ」
おじいさんは、兄たちにうらぎられた時のこと
を思いだしたのか、つらそうな顔をしました。



「おじいさんは、なぜ兄さんたちにうらぎら
れたの」

「兄たちは、わしにやきもちをやいたのじゃ。
わしの妻は、とても美しい人じゃった。姿が美
しいだけでなく、心のやさしい人だったのじゃ。
その上、働き者じゃった。妻は朝から晩までよ
く働いてくれた。
だから、兄たちはわしがうらやましかったのじ
ゃろ」



「おじいさんは、兄さんたちにうらぎられた時、
どうしたの?」
「わしは、兄たちにうらぎられたと知っても、
なぜか兄たちをうらんだり、にくんだりするこ
とができなかった」
「あんなにひどいことをされたのに、おまえは
少しも兄たちをにくんでおらぬ。なぜじゃ。
わしを助けてくれた神様は、そういったけれど
・・・ね」



「その人を心から信じていれば、どんなにひど
いことをされても、うらんだり、にくんだりで
きないものだということを、わしはその時知っ
たのじゃ」


        つづく



竜神になった三郎」が収録されている
     本は、こちら。


http://www.geocities.jp/dowakan/douwasyuu2.html



竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)

竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)