童話「かきつばたになった少女」


童話「かきつばたになった少女」6


「あなたの名前は、なんていうの?」
「おらの名前は、山彦」
「山彦?じゃあ、狩が上手で、足が早いという、山
彦さんなの?」
「そうだよ。おらがその山彦さ」
山彦は、大きくうなずきました。



山彦のことは、女神さまたちの間でも、うわさにな
っていました。
霧が峰へ行くと、えものを追って走っている、足
の早い少年がいる。色は黒いけれど、とてもりりし
い少年だ」と。
かきつばたも「いつか山彦に会いたいな」と思って
いました。



かきつばたは、人間の少年を、遠くからみたことは
ありますが、話をするのは今日が初めてでした。
「色は黒いけれど、山彦さんて素敵なかたね。おと
もだちになりたいわ」
かきつばたは、心の中でそっとつぶやきました。
二人とも、今日初めて会ったのに、いつかどこかで
会ったことがあるような、とてもなつかしい気がし
ました。



「かきつばたさん、霧が峰へ何しにきたの?」
「病気のおばさまに、きすげの花をプレゼントしよ
うと思って、花をつみにきたのよ」
「かきつばたさんって、やさしいんだね」


                 つづく



童話「かきつばたになった少女」は、今年
http://www.choeisha.com/から
発行される、みほようこの四冊目の童話集・「ラ
イオンめざめる」に収録されます。



童話集「ライオンめざめる」は、「風の神様から
のおくりもの」シリーズ4。
今、本を製作中。
九月までには、本ができる予定です。