童話「かきつばたになった少女」


童話「かきつばたになった少女」7


「おばさまは病気なの。それにもう長くは生きられ
ないわ。だから、おばさまの最後の願いを聞いてあ
げたいと思って、だれにも行き先をつけず、きすげ
の花をとりにきたのよ」
「じゃあ、みんなが心配しているかもしれないよ。
早く帰ったほうがいいよ」



「そうね、早く帰って、おばさまにきすげの花をみ
てもらうわ」
「おばさまが一日も早く元気になると良いね」
山彦は、そういってはげましてくれました。
二人は心をひかれながらも、その日は少し話をした
だけで、別れました。



その日の夕方。
かきつばたからきすげの花をもらったおばさまは、
とてもうれしそうでした。
「かきつばた、ありがとう。きすげの花をみること
ができて、うれしいわ。もう何もおもいのこすこと
はない」
「おばさま、今日ね、霧が峰で山彦という少年に会
ったわ」
「えっ、山彦に?」
おばさまは、驚いたような顔をしました。
「おばさまは、山彦のことを知っているの?」


                         つづく


童話「かきつばたになった少女」は、今年
http://www.choeisha.com/から
発行される、みほようこの四冊目の童話集・「ラ
イオンめざめる」に収録されます。



童話集「ライオンめざめる」は、「風の神様から
のおくりもの」シリーズ4。
今、本を製作中。
九月までには、本ができる予定です。