かきつばたになった少女10
二人とも、今日初めて会ったのに、いつか
どこかで会ったことがあるような、とても
なつかしい気がしました。
「かきつばたさん、霧が峰へ何しにきたの?」
「病気のおばさまに、きすげの花をプレゼ
ントしようと思って、花をつみにきたのよ」
「かきつばたさんって、やさしいんだね」
「おばさまは病気なの。それにもう長くは
生きられないわ。
だから、おばさまの最後の願いを聞いてあ
げたいと思って、だれにも行き先をつけず、
きすげの花をとりにきたのよ」
「じゃあ、みんなが心配しているかもしれ
ないよ。早く帰ったほうがいいよ」
「そうね、早く帰って、おばさまにきすげ
の花をみてもらうわ」
「おばさまが一日も早く元気になると良いね」
山彦は、そういってはげましてくれました。
二人は心をひかれながらも、その日は少し
話をしただけで、別れました。
つづく
「かきつばたになった少女」は、みほようこ
の四冊目の童話集・「ライオンめざめる」に
収録されています。
童話集「ライオンめざめる」は、昨年十月、
「鳥影社」から発行されました。
童話集「ライオンめざめる」
http://www.geocities.jp/dowakan/douwasyuu4.html
http://www.bk1.co.jp/product/2719469
http://7andy.yahoo.co.jp/books/detail?accd=31785511