童話「ライオンめざめる」


     童話「ライオンめざめる」5


松虫草の花の上で、ちょうが大きく羽をひろげた時、
かなは「あっ」と驚きの声をあげました。
そのちょうは、くじゃくの羽のような、鮮やかな色
をした赤いちょうでした。
ちょうの羽には、大きな目玉のようにみえるもよう
がついています。ちょうをじっとみていると、かな
は誰かにみつめられているような気がしました。



しばらくすると、あっちの方から一匹、こっちの方
から一匹と、たくさんのちょうが、松虫草のまわり
に集まってきました。
ちょうの数は何百匹、いや何千匹でしょうか。
集まってきたちょうたちは、かなとりゅうのまわりを、
楽しそうにひらひらと舞い始めました。
誰がふいているのでしょうか。
どこからか清らかな笛の音も聞こえてきます。ちょう
たちは、その笛の音にあわせ、楽しそうに舞っていま
す。



「うーん・・・うーん・・・」
ライオンのうなり声で、かなははっとわれにかえりま
した。
あんなにたくさんいた赤いちょうは、どこをさがして
も一匹もいませんでした。
「赤いちょうは、どこへ消えてしまったのかしら」
かなは、ふしぎに思いました。
みると、松虫草の花が、何事もなかったかのように、
風でゆれています。
「いたいよぉー・・・いたいよ・・・」


               つづく



童話「ライオンめざめる」は、みほようこの四冊目
の童話集・「ライオンめざめる」に収録されます。
「ライオンめざめる」は、「風の神様からのおくり
ものシリーズ」4。
今、本を製作中。



童話集「ライオンめざめる」は、今月末(九月末)に
http://www.choeisha.com/
から、発行される予定です。



     収録される童話


  ・ ライオンめざめる

  ・ 笛の音よ、永久にひびけ

  ・ かきつばたになった少女



   今までに発行されたみほようこの本



       風の神様からのおくりもの―諏訪の童話




       竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)




       ふしぎな鈴 風の神様からのおくりもの (3)