愛犬りゅう「ばいばい、またね」


   愛犬りゅう「ばいばい、またね」20


ある日、帰宅途中の小学生が、庭へ入ってきた。
そして、ころがっているボールをみつけた。
それからは、長い棒を持ってきて、小学生がボ
ールをもっていってしまう。
「ぼくのボールだよ。ボールを返して」
ぼくがこどもたちに抗議すると、
「おまえだって、草むらでボールを拾ってきた
んだろ」という。
そういわれれば、ぼくには返すことばもない。



「まあ、良いか・・・」
気前の良いぼくは、小学生にボールをあげてしま
うことが多かった。
それでも、最近拾ってきたボールだけは、大事に
小屋の中にそっとかくしていた。
ぼくみたいにボールの好きな犬はいないだろうな。




前回、「ボールを飲みこむとこわいから」といっ
て、あーちゃんにゴルフボールを無理やりとりあ
げられた話をしたね。
そのことが原因で、数ヶ月後、大変な事件がおき
てしまった。
今思い出しても、とほほ・・・というような事件
だった。




今日はその話をしよう。
あの日から、ぼくはあーちゃんの顔をみると、「ボ
ールをとりあげられてしまうのではないか」と、思
うようになった。
だから、あーちゃんが外へでてくると、ボールをと
られないように、小屋の座布団の下へかくしていた。




それから数ヶ月後。
その日、ぼくは昨日散歩の途中で拾ってきた野球ボ
ールで遊んでいた。
いつも古いボールしか落ちていないのに、昨日は新
品のボールが落ちていたのだ。
「わーい!!新品のボールだ。うれしいな」
ぼくはとびあがってよろこんだ。
そして、昨夜はそのボールをだいてねた。


    つづく