白駒の池11
「きよちゃん。わからないって、どういうこと?」
「十一年前の秋、とうちゃんは、八ヶ岳のふもと
の森へ、きのこをとりにいったの。夢中できのこ
をとっているうちに、とうちゃんは道に迷ってし
まったんだって」
「ああ、その話、長者から聞いたことがある。昨
年の秋、長者ときのことりに行ったら、以前道に
迷ってしまったねと話してくれた」
その時、長者は「たしかに、このあたりに湖があ
ったはずなのに・・・。なぜないのだろう?」と、
ひとりごとをいっていた。
「何ひとりごとをいっているのかな」と、ふしぎ
に思ったことをおぼえている。
清太は、そう話してくれました。
「とうちゃんは、帰る道をさがして、森の中をあ
ちこち歩いたらしいの。歩いているうちに、しら
びそやこめつがなどの原生林の中へ入ってしまっ
たといっていたわ。その原生林をぬけたら、目の
前に美しい湖があったんだって。もみじやななか
まどが真っ赤に紅葉していて、とてもきれいだっ
たと話してくれた」
「八ヶ岳の原生林の中に、そんな美しい湖がある
んだね。その湖をみたいね」
清太がいいました。
つづく