白駒の池


白駒の池19


「たしかに、次郎には、そういうところがある。
わが家の仕事は、大変だ。村の人たちの相談に
ものってあげなくていけないし、みんなの先頭
にたって、いろいろやっていかなくてはならな
いしね」
「結婚とは、むずかしいものだ」と、長者は思
いました。


 
「きよ。おまえには、好きな人がいるのかい」
「はい。います」
「とうちゃんが知っている人かい」
「とうちゃんがよく知っている人よ。清太さん」
「清太?・・・清太って、わが家で働いている
清太かい?」
「そう、清太さん」
「きよ。清太は、うちの使用人なんだよ」
「とうちゃん。使用人の清太さんを、私が好き
になってはいけないの?私、清太さんが大好き。
できれば、清太さんと結婚したいと思っているわ」
きよの話を聞いた長者は、びっくりました。



「きよは、いつから清太が好きになったんだい」
「清太さんが、この家にきた時から好きだったわ。
でも、最初は、大好きな兄ちゃんという感じだっ
た。ほんとうに清太さんが好きなんだなとわかっ
たのは、この間霧ケ峰高原へゆうすげの花をみに
いった時」
「そうだったのか。きよ」
長者は、二人が仲良くしていることは知っていま
した。しかし、きよが清太と結婚したいと考えて
いるとは、夢にも思っていなかったのです。


                       つづく