白駒の池


     白駒の池22


「清太。清太は・・・娘のきよのことを・・・
どう思う?」
「おじょうさまですか。おじょうさまは美しいし、
やさしいし、すてきなかただと思いますが」
「いや・・・清太・・・そういうことを聞いてい
るのではなくて、つまり・・・その・・・
清太は・・・娘のきよのことが・・・好きかどう
か・・・と聞いているのだ」
長者は、どう聞いたらよいのかわからず、口ごも
ってしまいました。



「おじょうさまのことなど、おらは何とも思って
いません」、清太がそういってくれるのを、長者
はひそかに期待していたのです。
ところが・・・。
「おら・・・いや私は、おじょうさまのことが大
好きです。この家にお世話になった時から、おじ
ょうさまのことが好きでした」
清太は、長者の目をみて、きっぱりいいました。



「何?きよのことが大好きだと!!」
長者は、びっくりしました。
その時、清太には、「おまえは、とんでもないや
つだ!!」という長者の心の声が聞こえました。
「はい。私は、おじょうさまのことが大好きです」
清太は、再び答えました。
「清太。おまえは・・・おまえは、この家の使用人
だということを忘れたのか!!」
長者は、強い口調でいいました。


       つづく