竜の姿をみた少女5
「となりのかなちゃんは、しらかば湖に竜がいると
信じているようだわ」
「この世に、竜なんているはずないのにね。何を馬
鹿なことをいっているのかしら」
「そういえば、かなちゃんのおとうさんも、湖に竜
がいると信じているみたい」
「ほんとうにおかしな親子だねぇ」
村の人々は、どの人も「竜なんかいない」と思って
いました。
山深い村にも、ようやくあたたかな春がやってきま
した。湖のほとりでは、空色のいぬのふぐりの花が
咲き始めました。
かなは、いぬのふぐりの花が大好き。
「かな、この空色の花はね、いぬのふぐりという花
だよ。かわいい花だね。空のお星さんが、草むらで
かくれんぼしているみたいだね。いぬのふぐりの花
は、きびしい寒さの中で、春一番に咲くんだよ」
なくなったおかあさんが、教えてくれた花でした。
つづく
「竜の姿をみた少女」は、みほようこの二冊目の
童話集・「竜神になった三郎」の続編。
- 作者: みほようこ,長野ひろかず
- 出版社/メーカー: 鳥影社
- 発売日: 2004/04
- メディア: 単行本
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湖につき落とされた三郎が、地の神に
助けられ、心のやさしさゆえに、竜神
となる表題作ほか、守屋山の明神様に
まつわる、福寿草と少女の話を収録。
信州諏訪の風の神様から聞いた話をま
とめた第2弾。
収録されている童話
・ 竜神になった三郎
・ 福寿草になった少女