竜神になった三郎


竜神になった三郎19


「兄たちがあんなひどいことをするなんて。
おれは兄たちのことを、一度も疑ったこと
はなかったのに・・・」
諏訪湖へつきおとされた時のことが、昨日
のことのように思い出されました。
「あれから何年だったのだろうか」
三郎はそっとつぶやきました。



「アッハハ、アハハ」
兄たちの家から、笑い声が聞こえてきまし
た。
「兄たちは幸せに暮らしているのだな」
三郎は、笑い声を聞いて、安心しました。



「もしかして、おっかあは諏訪湖へ行った
のかもしれない」
そう思った三郎は、諏訪湖をめざしてはっ
ていきました。
「おっかあー、おっかあー。どこにいるー。
いたら返事をしてくりょー」 
三郎はたちどまり、大声でさけびます。


       つづく



竜神になった三郎」は、みほようこの二
冊目の童話集・「竜神になった三郎」に収
録されています。








竜神になった三郎」は、2004年4月、
信州の「諏訪大社」の御柱祭にあわせ、
「鳥影社」から発行されました。
挿絵は、長野ひろかず先生。



湖につき落とされた三郎が、地の神に助けら
れ、心のやさしさゆえに、竜神となる表題作
ほか、守屋山の明神様にまつわる、福寿草
少女の話を収録。


信州諏訪の「風の神様」から聞いた話をまと
めた第2弾。