火とぼし山37
みると、桑畑のむこうから、娘が走っ
てきます。
「きよが、会いにきたのだろうか」
明神さまは、そう思いました。
でも、きよではありません。
みたことのない娘でした。
明神さまは、あわてて桑のかげにかく
れました。
「こんにちは、次郎さん」
「みよちゃん。どうしたの」
「私、次郎さんに会いたくて、ここへ
きたの。次郎さんに会えて、うれしいわ」
娘が、うれしそうにいいました。
「みよちゃん。よくここがわかったね」
つづく
「おみわたり」で有名な信州の諏訪湖
には、「火とぼし山」という悲しい伝
説があります。
「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。