赤い夕顔の花


   赤い夕顔の花6


盛永が城主になって五年後。
天文十三年(1544年)秋。
月のきれいな夜でした。
権現城では、月見の宴が開かれて
いました。



「今宵の月は、美しいのぅ」
盛永は、ごきげんでした。
「犬坊」
「犬坊はどこじゃ」
盛永は、小姓の犬坊をよびました。



「殿様。何かご用でしょうか」
「犬坊、ここへおすわり」
盛永は、自分の横に、犬坊を座ら
せました。
「犬坊は、いいのぅ。殿様に気に
いられて。ほんとに幸せな少年じゃ。
なにしろ、犬坊は美少年だからのぅ」
家臣たちは、小姓の犬坊をうらや
ましく思っていました。


            つづく



「赤い夕顔の花」は、信州の南端
にあった「権現城」に伝わってい
る話をヒントにして、みほようこ
が書いた物語。