開善寺の早梅の精12
「袖に落ちた梅の花は、夢の中で
ちぎった女性のようだ」という意
味の歌をよんだ文次は、眠くなっ
てねてしまいました。
女の人は、文次の寝姿をじっとみ
ていました。
しきたへの手枕の野の梅ならば
寝ての朝けの袖に匂はむ
女の人は、「ちぎりをかわす相手
が梅の花ならば、翌朝はとてもよ
い香りが残っているでしょう」と
よんだのでしょうね。
女の人は歌を読むと、静かに奥へ
消えていきました。
どのくらいの時間がすぎたのでし
ょうか。
文次が目をさますと、美しい女の
人も、おいしい酒も、料理も消え
ていました。
つづく
信州の伊那谷に、「開善寺」という
寺があります。
「開善寺の早梅の精」は、開善寺に
伝わっている話をヒントにして、
みほようこが書いた物語。
初めて読んでくれたかたへ
開善寺の早梅の精1
http://d.hatena.ne.jp/youko510/20080607#p1
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