ふしぎな鈴29
「この鈴はね、鎌倉の和尚さんか
らいただいた鈴だよ。
この春、丘へ桜を見に行った時、
小桜姫の話をしてあげたね。
おぼえているかな?
この鈴は、小桜姫が大切にしてい
た鈴の一つだよ。
小桜姫はね、二つの鈴を大切にし
ていたのだよ。
もう一つの鈴はね…」
ここまで話すと、おとうさんは安
心したのか、かなの手をしっかり
にぎりました。
「かな、この鈴をいつまでも大切
にするのだよ」
こういうと、おとうさんは靜かに
息をひきとりました。
時間がたつにつれ、おとうさんの
体が、だんだんに冷たくなってい
きました。
つづく
前回の分は、こちら。
http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100711#p2
初めて読んでくださったかたへ
http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100610#p1
「ふしぎな鈴」は、みほようこの
三冊目の童話。
2005年9月、「鳥影社」から
発行されました。
リーン・リーン・リーン。…
五百年の時をへて、心やさしい小
桜姫と現代の少女をむすぶ、美し
い鈴の音が聞こえる。
信州諏訪の「風の神様」が、そっ
と教えてくれたお話。